【資料1−1】雇用の分野における障害者と障害者でない者との均等な機会若しくは待遇の確保又は障害者である労働者の有する能力の有効な発揮の支障となっている事情を改善するために事業主が講ずべき措置に関する指針(案) 第1 趣旨   この指針は、障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和35年法律第123号。以下「法」という。)第36条の5第1項の規定に基づき、法第36条の2から第36条の4までの規定に基づき事業主が講ずべき措置(以下「合理的配慮」という。)に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な事項について定めたものである。 第2 基本的な考え方   全ての事業主は、法第36条の2から第36条の4までの規定に基づき、労働者の募集及び採用について、障害者(身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)があるため、長期にわたり、職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な者をいう。以下同じ。)と障害者でない者との均等な機会の確保の支障となっている事情を改善するため、労働者の募集及び採用に当たり障害者からの申出により当該障害者の障害の特性に配慮した必要な措置を講じなければならず、また、障害者である労働者について、障害者でない労働者との均等な待遇の確保又は障害者である労働者の有する能力の有効な発揮の支障となっている事情を改善するため、その雇用する障害者である労働者の障害の特性に配慮した職務の円滑な遂行に必要な施設の整備、援助を行う者の配置その他の必要な措置を講じなければならない。ただし、事業主に対して過重な負担を及ぼすこととなるときは、この限りでない。     合理的配慮に関する基本的な考え方は、以下のとおりである。 1 合理的配慮は、障害者の個々の事情と事業主との相互理解の中で提供されるべき性質のものであること。 2 合理的配慮の提供は事業主の義務であるが、採用後の合理的配慮について、事業主が必要な注意を払ってもその雇用する労働者が障害者であることを知り得なかった場合には、合理的配慮の提供義務違反を問われないこと。 3 過重な負担にならない範囲で、職場において支障となっている事情等を改善する合理的配慮に係る措置が複数あるとき、事業主が、障害者との話合いの下、その意向を十分に尊重した上で、より提供しやすい措置をとることは差し支えないこと。   また、障害者が希望する合理的配慮に係る措置が過重な負担であるとき、事業主は、障害者との話合いの下、その意向を十分に尊重した上で、過重な負担にならない範囲で合理的配慮に係る措置をとること。 4 合理的配慮の提供が円滑になされるようにする観点から、障害者も共に働く一人の労働者であり、事業主や同じ職場で働く者が障害の特性に関する正しい知識の取得や理解を深めることが重要であること。 第3 合理的配慮の手続  1 募集及び採用時における合理的配慮の提供について (1) 障害者からの合理的配慮の申出   イ 募集及び採用時における合理的配慮が必要な障害者は、事業主に対して、募集及び採用に当たって支障となっている事情及びその改善のために希望する措置の内容を申し出ること。   ロ その際、障害者が希望する措置の内容を具体的に申し出ることが困難な場合は、支障となっている事情を明らかにすることで足りること。   ハ なお、合理的配慮に係る措置の内容によっては準備に一定の時間がかかる場合があることから、障害者には、面接日等までの間に時間的余裕をもって事業主に申し出ることが求められること。 (2) 合理的配慮に係る措置の内容に関する話合い     事業主は、障害者からの合理的配慮に関する事業主への申出を受けた場合には、募集及び採用に当たって支障となっている事情が確認されれば、合理的配慮としてどのような措置を行うかについて当該障害者と話合いを行うこと。     なお、障害者が希望する措置の内容を具体的に申し出ることが困難な場合は、事業主は実施可能な措置を示し、当該障害者と話合いを行うこと。 (3) 合理的配慮の確定   イ 合理的配慮の提供義務を負う事業主は、障害者との話合いを踏まえ、その意向を十分に尊重しつつ、具体的にどのような措置を講じるかを検討し、講じることとした措置の内容(障害者から申出があった具体的な措置が過重な負担に当たると判断した場合には、当該措置を実施できないことを含む。)を当該障害者に伝えること。   ロ その検討及び実施に際して、過重な負担にならない範囲で、募集及び採用に当たって支障となっている事情等を改善する合理的配慮に係る措置が複数あるとき、事業主が、障害者との話合いの下、その意向を十分に尊重した上で、より提供しやすい措置をとることは差し支えないこと。また、障害者が希望する合理的配慮に係る措置が過重な負担であったとき、事業主は、障害者との話合いの下、その意向を十分に尊重した上で、過重な負担にならない範囲で、合理的配慮に係る措置をとること。   ハ 講じることとした措置の内容を障害者に伝える際、当該障害者からの求めに応じて、当該措置を講じることとした理由(障害者から申出があった具体的な措置が過重な負担に当たると判断した場合には、その理由を含む。)を説明すること。 2 職場における合理的配慮の提供について (1) 事業主の職場における支障となっている事情の有無等の確認   イ 労働者が障害者であることを雇入れ時までに把握している場合には、事業主は、雇入れ時までに当該障害者に対して職場における支障となっている事情の有無を確認すること。   ロ また、    @ 労働者が障害者であることを雇入れ時までに把握できなかった場合については、障害者であることを把握した際に、    A 労働者が雇入れ時に障害者でなかった場合については、障害者となったことを事業主が把握した際に、    事業主は当該障害者に対し、遅滞なく、職場において支障となっている事情の有無を確認すること。   ハ さらに、障害の状態や職場の状況が変化することもあるため、事業主は必要に応じて定期的に職場において支障となっている事情の有無を確認すること。   ニ なお、障害者は、事業主からの確認を待たず、事業主に対して自ら職場において支障となっている事情を申し出ることが可能であること。   ホ 事業主は、職場において支障となっている事情があれば、その改善のために障害者が希望する措置の内容を確認すること。     その際(障害者が自ら合理的配慮の提供を希望することを申し出た場合を含む。)、障害者が希望する措置の内容を具体的に申し出ることが困難な場合は、支障となっている事情を明らかにすることで足りること。 (2) 合理的配慮に係る措置の内容に関する話合い(1(2)と同様)     事業主は、障害者に対する合理的配慮の提供が必要であることを確認した場合には、合理的配慮としてどのような措置を行うかについて当該障害者と話合いを行うこと。     なお、障害者が希望する措置の内容を具体的に申し出ることが困難な場合は、事業主は実施可能な措置を示し、当該障害者と話合いを行うこと。 (3) 合理的配慮の確定(ロ及びハは1(3)と同様)   イ 合理的配慮の提供義務を負う事業主は、障害者との話合いを踏まえ、その意向を十分に尊重しつつ、具体的にどのような措置を講じるかを検討し、講じることとした措置の内容(障害者から申出があった具体的な措置が過重な負担に当たると判断した場合には、当該措置を実施できないことを含む。)を障害者に伝えること。なお、当該措置の実施に一定の時間がかかる場合は、その旨を当該障害者に伝えること。   ロ その検討及び実施に際して、過重な負担にならない範囲で、職場において支障となっている事情等を改善する合理的配慮に係る措置が複数あるとき、事業主が、障害者との話合いの下、その意向を十分に尊重した上で、より提供しやすい措置をとることは差し支えないこと。また、障害者が希望する合理的配慮に係る措置が過重な負担であったとき、事業主は、障害者との話合いの下、その意向を十分に尊重した上で、過重な負担にならない範囲で、合理的配慮に係る措置をとること。   ハ 講じることとした措置の内容を障害者に伝える際、当該障害者からの求めに応じて、当該措置を講じることとした理由(障害者から申出があった具体的な措置が過重な負担に当たると判断した場合には、その理由を含む。)を説明すること。 3 その他   合理的配慮の手続において、障害者の意向を確認することが困難な場合、就労支援機関の職員等に障害者を補佐することを求めても差し支えないこと。 第4 合理的配慮の内容 1 合理的配慮の内容   合理的配慮とは、次に掲げる措置であること(ただし、第5の過重な負担に当たる措置を除く。)。 (1) 募集及び採用時については、障害者と障害者でない者との均等な機会の確保の支障となっている事情を改善するため、障害者の障害の特性に配慮した必要な措置 (2) 採用後については、障害者である労働者について、障害者でない労働者との均等な待遇の確保又は障害者である労働者の有する能力の有効な発揮の支障となっている事情を改善するため、その障害者である労働者の障害の特性に配慮した職務の円滑な遂行に必要な施設の整備、援助を行う者の配置その他の必要な措置   なお、採用後に講じる合理的配慮は職務の円滑な遂行に必要な措置であることから、例えば、次に掲げる措置が合理的配慮として事業主に求められるものではないこと。 (1) 障害者である労働者の日常生活のために必要である眼鏡や車いす等を提供すること。 (2) 中途障害により、配慮をしても重要な職務遂行に支障を来すことが合理的配慮の手続の過程において判断される場合に、当該職務の遂行を継続させること。ただし、当該職務の遂行を継続させることができない場合には、別の職務に就かせることなど、個々の職場の状況に応じた他の合理的配慮を検討することが必要であること。 2 合理的配慮の事例   合理的配慮の事例として、多くの事業主が対応できると考えられる措置は別表のとおりであること。   なお、合理的配慮は個々の障害者である労働者の障害の状態や職場の状況に応じて提供されるものであり、多様かつ個別性が高いものであること。したがって、別表に記載された事例はあくまでも例示であり、あらゆる事業主が必ずしも実施するものではなく、また、別表に記載されている事例以外であっても合理的配慮に該当するものがあること。 第5 過重な負担  合理的配慮の提供の義務については、事業主に対して「過重な負担」を及ぼすこととなる場合は除くこととしている。 1 過重な負担の考慮要素   事業主は、過重な負担に該当するか否かについて、次に掲げる要素を総合的に勘案しながら、個別に判断すること。 (1) 事業活動への影響の程度   当該措置を講ずることによる事業所における生産活動やサービス提供への影響その他の事業活動への影響の程度 (2) 実現困難度   事業所の立地状況や施設の所有形態等による当該措置を講ずるための機器や人材の確保、設備の整備等の困難度 (3) 費用・負担の程度   当該措置を講ずることによる費用・負担の程度   ただし、複数の障害者から合理的配慮に関する要望があった場合、それらの複数の措置に要する費用・負担も勘案して判断することとなること。 (4) 企業の規模   当該企業の規模に応じた負担の程度 (5) 企業の財務状況   当該企業の財務状況に応じた負担の程度 (6) 公的支援の有無   当該措置に係る公的支援を利用できる場合は、その利用を前提とした上での判断となること。 2 過重な負担に当たると判断した場合   事業主は、障害者から申出があった具体的な措置が過重な負担に当たると判断した場合には、当該措置を実施できないことを障害者に伝えるとともに、障害者からの求めに応じて、当該措置が過重な負担に当たると判断した理由を説明すること。また、事業主は、障害者との話し合いの下、その意向を十分に尊重した上で、過重な負担にならない範囲で合理的配慮に係る措置をとること。 第6 相談体制の整備等  事業主は、法第36条の3に規定する措置に関し、その雇用する障害者である労働者からの相談に応じ、適切に対応するため、雇用管理上次の措置を講じなければならない。 1 相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備 (1) 相談への対応のための窓口(以下この1において「相談窓口」という。)をあらかじめ定め、周知すること。  (相談窓口をあらかじめ定めていると認められる例)  イ 相談に対応する担当者・部署をあらかじめ定めること。  ロ 外部の機関に相談への対応を委託すること。 (2) 相談窓口の担当者が、相談に対し、その内容や相談者の状況に応じ適切に対応できるよう必要な措置を講ずること。 2 職場における合理的配慮に関する相談があったときの適切な対応 (1) 職場において支障となっている事情の有無を迅速に確認すること。 (2) 職場において支障となっている事情が確認された場合、合理的配慮の手続を適切に行うこと。 3 相談者のプライバシーを保護するために必要な措置   職場における合理的配慮に係る相談者の情報は、当該相談者のプライバシーに属するものであることから、相談者のプライバシーを保護するために必要な措置を講ずるとともに、当該措置を講じていることについて周知すること。 4 相談をしたことを理由とする不利益取扱いの禁止   障害者である労働者が職場における合理的配慮に関し相談をしたことを理由として、解雇その他の不利益な取扱いを行ってはならない旨を定め、周知・啓発すること。   (不利益な取扱いを行ってはならない旨を定め、労働者にその周知・啓発することについて措置を講じていると認められる例) (1) 就業規則その他の職場における職務規律等を定めた文書において、障害者である労働者が職場における合理的配慮に関し相談をしたこと、又は事実関係の確認に協力したこと等を理由として、当該障害者である労働者が解雇等の不利益な取扱いをされない旨を規定し、労働者に周知・啓発をすること。 (2) 社内報、パンフレット、社内ホームページ等広報又は啓発のための資料等に、障害者である労働者が職場における合理的配慮に関し相談をしたこと、又は事実関係の確認に協力したこと等を理由として、当該障害者である労働者が解雇等の不利益な取扱いをされない旨を記載し、労働者に配布等すること。 5 その他   これらの相談体制の整備等に当たっては、障害者である労働者の疑義の解消や苦情の自主的な解決に資するものであることに留意すること。